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失敗が怖くて動けない大学生へ。学生起業で会社を閉じたキミタビ代表が話す「打席の数」
大学時代に仲間と3人で始めた会社を、2年ほどで閉じた。キミタビ代表の渡邉が「人生の中で最も落ち込んだ」と話す失敗と、そのあとに決めたこと、コロナで授業が止まった日のこと。失敗を怖がりすぎないための考え方と、打席を増やすやり方をまとめました。

結婚式を、一組ずつオリジナルでつくる。キミタビ代表の渡邉が、大学時代に仲間と3人で始めた最初の会社は、そういう仕事でした。
うまくいきませんでした。会社は2年ほどで閉じることになります。
最初は自分が21歳の時、大学3年生の時ですね。結局2年ぐらい事業をやったんですけども、最終的にはうまくいかず会社を閉じるという経験をした。人生の中で最も落ち込んだ瞬間だったんじゃないかなというふうに思います。
「失敗が怖くて、やってみたいことに手を挙げられない」。そう感じている大学生は少なくないと思います。今回は「失敗と、そこから学んだこと」をテーマに、渡邉に話を聞きました。きれいな成功談ではなく、閉じた会社の話から始まります。
仲間と3人で始めた会社は、なぜ閉じることになったのか
会社を閉じると決めたころのことを聞くと、渡邉は「一言で言うと」と前置きして、こう話しました。
自分たちがやろうとしていることに将来性がない、収益性がないと分かった瞬間に、自分たちがやりたかったことではないことをやらざるを得ないという。
始めたのは、ウェディングプロデュース。結婚式をつくる仕事です。ところが、こだわるほど苦しくなりました。
オリジナルで結婚式を作れば作るほど利益率が下がっていく。それを価格に反映できないというジレンマに陥った結果、最終的には僕らが作っている結婚式というのは、極力利益を確保していくということになっていくと、他社さんが作っている結婚式とほぼ変わらないものが出来上がっていたと。
始めたときの理由が、少しずつ消えていったわけです。
そうしたら一人抜け、二人抜け、(後略)
1年ほど続けたころには、このビジネスプランでは難しいと分かってきていました。ちょうど大学を卒業する時期に、仲間の一人から、他の方向性でやりたいという話が出ます。そのとき「ものすごい不安になったことは覚えています」と渡邉は言います。
いちばん大きかった不安は「将来本当に大丈夫かな」
何がそんなに不安だったのか。聞くと、渡邉はこう答えました。
結局、所詮学生でしたし、自分自身が例えばビジネスモデルが少し崩れ出したときに何をしたらいいのかというのがよく分かってもなかったですし、当然お金も持っていない。周りはどんどん卒業して就職していく、新卒で楽しそう。その中で自分自身は前に進んでいるのか進んでいないのか分からないという状況に陥っていく。一言で言うと将来本当に大丈夫かなということが一番大きい不安ではありましたね。
この答えの最後の部分、「周りはどんどん卒業して就職していく」は、起業していない人にもそのまま当てはまる気がします。友だちが内定を報告するグループLINE。インターンの話で盛り上がる教室。そこで自分だけ立ち止まっているように見えるときの、あの感じです。
失敗が怖いとき、私たちが怖がっているものの中には、この「前に進んでいるのか分からない」が混ざっているのかもしれません。
1週間落ち込んで、決めたこと:この経験を糧に前に進む
では、そこからどう立ち直ったのか。渡邉は、すぐに前を向けたわけではないと言います。
もちろんその時は1週間ぐらいかな、すごい落ち込んだんですけど、まあその時にここで結局起業をしてみたんだけどもうまくいかなかったと、それはもうしょうがないんだけど、ここで諦めてしまったらただただ起業失敗した人になるよなと。
ここで諦めたら、起業に失敗した人で終わる。そう考えた先を、渡邉は今、こんな言葉で話します。
ただもう一回ちゃんと勉強し直して、将来もう一回立ち上げ直して、その会社を成功させたら、あの時の経験があったからこそ、今の会社が成功できているんだというふうなことにできる。つまり、過去あったことっていうのは、もう一回チャレンジすることによって上書きできるんだという、そういったことをどこまでその時思ったのかっていうのは覚えてないけども、少なくともこの経験を糧に前に進もうと決めた瞬間はあったなというのは覚えています。
正直な答えだと思います。「上書き」という考え方を、当時どこまで言葉にできていたかは覚えていない。覚えているのは、前に進もうと決めた瞬間があったこと。それでも「上書き」という言い方は、この話の芯です。
そして渡邉は「落ち込まなかった」とは言っていません。1週間は落ち込んだ。そのうえで、前に進むと決めた。落ち込む時間があることと、次に進むことは、両立します。
「勉強し直す」の先にあった場所
そのあと渡邉は、たまたま縁があって、ある投資ファンドに入ります。
そこで本当に経営のことも本当に一から学ばせてもらったり、あとは本当に仕事のやり方、能力の高い人たちがこんな夜中まで切磋琢磨して働いているんだっていう、いわゆる素晴らしい環境と基準の中で自分の能力を高めることができたと。その結果、最終的にフィリピンでも創業することができたかなというふうに思っています。
経営と仕事のやり方を一から学んだ、と渡邉は言います。フィリピンでの創業は、その先にありました。セブ島で10年以上、語学学校を経営することになります。その話は「キミタビは、なぜカンボジアで生まれたのか」に書いています。
大谷翔平でも、10回立って3回しか打てない
この話でいちばん伝えたいことは何か。最後にそう聞くと、渡邉は野球のたとえを出しました。
たくさん挑戦した人っていうのはたくさん失敗もしています。けどほとんどの人たちっていうのは失敗を恐れてしまう。ただ、挑戦したことが全て成功する人なんて誰もいません。よく例えますけど、大谷翔平さんであっても10回バッターボックスに立ったら、3回しかヒットが打てない。裏を返すと7回は失敗しているわけで。ってことは、失敗を恐れるのではなく、打席に立つ数をいかに増やして、一つでも多くの成功を手に入れるっていうことなんじゃないかなと。
失敗をゼロにしたいなら、いちばん確かな方法は打席に立たないことです。ただ、そのときはヒットも生まれません。
渡邉は、自分の起業の失敗もこの「打席」の一つとして話しました。
僕の場合は学生時代にそういった起業失敗した経験もありますけど、結局その経験があったからこそ、次の打席、さらにその次の打席でいい結果を残していけるようになってるんじゃないかなと。
学生に向けては、こう続けます。
だからこそ学生さんに伝えたいのは、実は失敗しろってことなんじゃないかなと。失敗を恐れずに、もちろん失敗を狙っていくわけじゃないんだけども、結果として失敗したとしても、それはすべて人生は前に進んでいくと信じてやり続けることじゃないかなというふうに思っています。
「失敗しろ」は乱暴に聞こえるかもしれません。でも、すぐあとに「失敗を狙っていくわけじゃない」と付け足しています。言っているのは、わざと失敗することではなく、失敗するかもしれない打席を避けない、ということです。
大学生にとっての「打席」はどこにある?
「打席に立つ数を増やす」と言われても、いきなり起業するわけにはいきません。大学生の毎日にある打席を、大きさ別に並べてみました。
| 打席の大きさ | 例 | うまくいかなかったら | それでも手元に残るもの |
|---|---|---|---|
| 小さい(今日できる) | 授業で最初に手を挙げる/留学生に自分から話しかける/気になる先輩にDMを送る | 少し気まずい。返事が来ない | 「やってみたら、こうなった」という自分の経験 |
| 中くらい(1か月以内) | ゼミやサークルで企画を出す/学内のコンテストに応募する/短期のインターンに申し込む | 企画が通らない。選考に落ちる | 何が足りなかったかのヒント。次の応募の下書き |
| 大きい(半年〜1年) | 海外のプログラムに参加する/自分で団体や小さな事業を始める | 思ったように進まない。途中で形を変える | 人に話せる経験そのもの。渡邉の言う「次の打席」 |
いきなり大きい打席を狙わなくていいと思います。まずは小さい打席、失うものがほとんどないものから。
打席に立った回数を、手帳かスマホのメモで数えてみてください。ヒットか凡退かではなく、「立った」ことを1回と数えます。1か月たったら、一度見返してみてください。
コロナで授業が止まった日:2度目の「想定外」
失敗は、自分のせいで起きるものばかりではありません。渡邉が話してくれた場面がもう一つあります。フィリピンで語学学校を経営していた2020年のことです。
あれ2020年の3月13日の金曜日だったと思うんですけど、ガバメントの方から(中略)その翌週からもう授業をやってはいけないという命令が出た瞬間っていうのは、最初はとは言っても大丈夫でしょうっていう、何とかお願いすればできるんじゃないかと。
学校には、留学の途中の学生がたくさんいました。どう説明するのか。お金はどうなるのか。そもそも帰国できるのか。
その辺がもうすべてが初めてのことだったので。状況としてはパニックみたいな状況だけども、とにかく情報を収集して正しい意思決定をするしかない、っていうふうに割り切った瞬間はありました。
学生のときは、1週間落ち込んでから前を向いた。2020年は、パニックの中で「割り切った」。状況はまったく違います。それでも、どちらの話にも、起きたことを受け止めて「では次に何をするか」に切り替える瞬間が出てきます。
大学生の毎日でも、想定外は起きます。留学が中止になる。準備してきた発表の日に体調を崩す。そういうときは、まず落ち込んでいい。少し落ち着いたら、「いま分かっていること」と「分かっていないこと」を紙に分けて書いてみてください。
失敗を3行で書き直す:渡邉の会社の場合
「上書き」の最初の一歩として、失敗を3行で書いてみるやり方があります。
- 何をしようとしたか
- 何が起きたか
- 自分ではどうにもならなかったことは何か
余裕があれば、4つ目に「自分に足りなかったこと(あとから学べること)」を足します。
試しに、この記事で渡邉が話したことだけを使って、閉じた会社の話を、4つ目と「そのあと」も含めて書いてみます。
| 渡邉の会社の場合(取材で話したことから) | |
|---|---|
| ① 何をしようとしたか | オリジナルの結婚式をつくる |
| ② 何が起きたか | 利益を確保しようとすると、他社とほぼ変わらない結婚式になった。仲間が抜けていった |
| ③ 自分ではどうにもならなかったこと | オリジナルで作れば作るほど利益率が下がり、それを価格に反映できないというしくみ |
| ④ 自分に足りなかったこと(あとから学べること) | ビジネスモデルが崩れ出したときに、何をすればいいか分からなかった |
| そのあと | 1週間落ち込み、この経験を糧に前に進もうと決めた。縁のあった投資ファンドで、経営を一から学んだ |
③を書く意味は、全部を「自分がダメだったから」にしないことです。渡邉の場合、こだわるほど利益が下がるという、仕事のしくみの問題がありました。そのうえで④に、あとから学べることを分けて書きます。
自分の失敗でも、一度やってみてください。表の最後の「そのあと」の欄は、空けたままでかまいません。そこを埋めるのが、次の打席です。
就職活動で失敗経験を聞かれたときの話し方や、失敗のあとに自分を責めすぎないための研究は「挫折経験は面接でどう話す?」に、落ち込んだ日の過ごし方は「海外で落ち込むのはなぜ?」にまとめています。
キミタビの13日間にも、その日のうちにやり直せる打席がある
キミタビの4日目は、街に出て、英語で用意した質問で人に話を聞く日です。午前に一度話を聞き、英語で仮説を話し合って、フィードバックを受けてから、午後にもう一度街へ出ます。
午前の一回目がうまくいかなくても、午後にもう一度立てる打席です。8日目の企画の審査も、同じつくりになっています(13日間を1日ずつ)。
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