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意見を反対されて悔しいときは? 現地スタッフのげんげんさんが見てきた「反発のあと」
キミタビでは、スタッフが学生の意見に反対する場面があります。最初は反発した学生が、最後には満たされた顔になる。現地の運営を担ってきたげんげんさんの話と、フィードバックの研究から、反対されたときに頭の中で何をすればいいかを、3つの問いと表にまとめました。

チームで何日もかけて考えた案を、スタッフに見せる。返ってきたのは「それは違うと思う」。
悔しい。言い返したくなる。せっかくここまで来たのに、と思う。
キミタビでは、こういう場面が実際にあります。事業責任者として現地の運営を担ってきたげんげんさんは、それを隠しません。
キミタビの中で、僕らが学生さんの意見に反対するみたいな場面があります。 げんげんさん
そして、こう続けます。
そこで学生さんは結構やる気になってくれて、最初は反発はするんだけれども、最後にはすごく満足そうな、満たされた表情になる。 げんげんさん
反対されて、反発して、そのあと満たされた顔になる。真ん中で何が起きているのか。げんげんさんの話と、フィードバックの研究を手がかりに考えます。
目の色が変わるのは、1週目の後半
げんげんさんに「キミタビに関わる理由」を聞くと、最初に出てきたのは、学生の目の話でした。
印象的だったのは、参加者のほとんどに、目の色が変わる瞬間があったことです。だいたい1週間目の後半ぐらいに、メンバー同士で大変な思いもするんですけど、その大変さを克服して、英語とか気持ちの面とか、しっかり相手とコミュニケーションが取れた人は、目の色が変わって、やる気にあふれている、その熱意が伝わってくるのが印象的です。 げんげんさん
ここで大事なのは順番です。最初から目の色が変わるわけではありません。先に、メンバー同士の「大変な思い」があります。その大変さを越えて、英語や気持ちの面で、相手としっかりコミュニケーションが取れたときに、目の色が変わる。
げんげんさんの話では、そのあと学生から「英語が楽しくなった」という声も聞けたそうです。
海外で気持ちが一度下がる「谷」の日の過ごし方は「海外で落ち込むのはなぜ?」にまとめています。
反対されたあと、なぜ満たされた顔になるのか
では、スタッフに反対されたあと、学生の中で何が起きているのでしょう。
今回の取材では、げんげんさんが「どんな場面で、どう反対するのか」までは聞けていません。わかっているのは、反対する場面があること、学生が最初は反発すること、最後には満たされた表情になること。そしてげんげんさんにとって、それがやりがいだということです。
やりきった子たちのそういう姿が見られるので、そこがやっぱりやりがいですね。 げんげんさん
「やりきった」という言葉に注目してください。反対されて、そこで止まった学生の話ではありません。反発したあと、最後までやりきった学生の話です。
ここからは私たちの見方です。反対されて満たされた顔になるのは、反対が「あなたの案はだめだ」ではなく「あなたならもっと先まで行ける」と届いたときではないか、と私たちは見ています。同じ「それは違う」でも、どう受け取るかで、その後の動きはまるで変わります。
この「受け取り方」を調べた研究があります。
同じ指摘に、1文を添えたら
2014年に発表された、米国の研究です(Yeager ほか)。中学1年生(米国の7年生)が、ヒーローについての作文を書きました。先生は、ふだんどおりに指摘を書き込みます。「もっと具体的に」「例を挙げて」といったものです。
そのうえで、作文に付ける短い手紙を、2種類用意しました。どちらの生徒に渡るかは、くじのように決めています。
| 手紙の文面(英語の原文を、この記事で訳したもの) | |
|---|---|
| ふつうの手紙 | 作文へのフィードバックとして、コメントを書きました |
| 研究で調べた手紙 | このコメントを書いたのは、私があなたにとても高い期待を持っていて、あなたならそこに届くと知っているからです |
違うのは、この1文だけです。指摘の中身は同じです。
結果、書き直しを出した生徒の割合に差が出ました。はっきりした差が出たのは、学校や先生への信頼が揺らぎやすい立場にいたアフリカ系の生徒たちで、調整後の推定で、ふつうの手紙では17%、研究で調べた手紙では71%が書き直しを出しています。白人の生徒でも同じ向きの傾向はありましたが、統計的に意味のある差ではありませんでした。
この研究は、米国の中学校で、人種をまたいで先生と生徒の信頼が揺らぎやすいという状況を調べたものです。日本の大学生が、カンボジアで現地スタッフから反対される場面に、そのまま当てはまるとは言えません。
それでも、ここから借りられる考え方が1つあります。指摘が受け取れるかどうかは、指摘の中身だけで決まらない。「この人は自分に期待している」と思えるかどうかで、書き直すかどうかが変わる、ということです。
反対されたら、自分に聞く3つの問い
とはいえ、スタッフがいつも「期待しているよ」と言ってくれるとは限りません。言われなくても、自分の側でできることがあります。
フィードバックの研究をまとめた Hattie と Timperley(2007年)は、役に立つフィードバックは3つの問いに答えている、と整理しています。
- どこへ向かっているか(目標は何か)
- いまどこにいるか(目標に対して、どこまで来ているか)
- 次に何をするか(もっと進むために、何をするか)
反対されたとき、1つめと3つめが抜けたまま、「否定された」という気持ちだけが残りやすいのではないか、と私たちは見ています。そこで、自分から3つの問いを立ててみます。スタッフに聞き返してもかまいません。
- 「この案の目標は、〇〇だと思っています。そこはずれていませんか」
- 「いまの案は、目標に対してどこが足りないですか」
- 「次の1時間で直すなら、どこから手をつけるといいですか」
聞き返せば、少なくとも次に何をするかは分かります。
同じ論文には、もう1つ覚えておきたいことが書かれています。フィードバックには、作業そのものへの指摘、進め方への指摘、自分で自分を点検する力への指摘、そして「あなたは優秀だね」のような本人そのものへの言葉、という4つの段階がある。このうち、本人そのものへの言葉は、学びを進める力がいちばん弱い、というのです。
反対されて悔しいときは、その指摘が自分という人に向いているのか、案や進め方に向いているのかを、いったん分けてみてください。案や進め方への指摘なら、直す場所がそこにあります。
「参加して良かった」の中身
げんげんさんは、学生からよく「参加して良かった」と言われるそうです。ただ、大事なのはその中身だと言います。
なぜ良かったかというところがすごく重要なんですけど、不登校だった自分が変わったとか、前に進めなかった自分が変わった。苦しかったけど、楽しくなった。それぞれの思いがあって、参加して良かったと言ってくれます。 げんげんさん
ここにも「苦しかったけど」が入っています。苦しさが先にあって、そのあとに「楽しくなった」が来る。最初に聞いた、目の色の話と同じ順番です。
いちばん忘れられない場面を聞くと、修了のときの話が出てきました。
泣きながら、終了のときに、参加して良かった、このメンバーで良かったと言っていた瞬間です。 げんげんさん
「このメンバーで良かった」。1週目の後半に「大変な思い」をした、その相手のメンバーです。
げんげんさん自身にも、思うようにいかない時期がありました。キミタビを始めたばかりの頃、「参加者がなかなか集まらなくて」苦労したそうです。それでも一度開催したことが、いまにつながっていると言います。
(前略)社長(渡邉)がその時に開催していいよと言ってくれたのがすごく僕の中では大きかったですね。開催できたことによって、やっぱり実績ができて、それによってキミタビをブラッシュアップできたことが、今のキミタビにつながっていると思います。 げんげんさん
いまは、参加した先輩たちが相談会などで、後輩に「とにかく自信がない人は参加してみてください」と話してくれるそうです。
例:3つの問いを使ってみる
ここで、3つの問いの使い方を、架空の例で見てみます(げんげんさんの話ではなく、この記事のための例です)。
チームの案は「地域の子どもたちに、日本の遊びを教えるイベントを開く」。スタッフからは「それは違うと思う」と返ってきました。
まず1つめ、どこへ向かっているか。「この案の目標は、子どもたちに楽しんでもらうことです。そこは合っていますか」と聞きます。返ってきたのが「目標は、地域の人が自分たちで続けられることを見つける、だったよね」だったら、ずれていたのは案ではなく目標の読み方です。
次に2つめ、いまどこにいるか。「その目標に対して、いまの案は何が足りないですか」。答えは「1回で終わるイベントだと、私たちが帰ったあとに残らない」かもしれません。
最後に3つめ、次に何をするか。「次に直すなら、どこからですか」。たとえば「明日の聞き取りで、子どもたちがふだん何をして遊んでいるかを3人に聞いてくる」。ここまで来れば、悔しさは残っていても、明日やることは1つに決まっています。
ポイントは、3つの問いを全部スタッフに聞かなくてもいいことです。チームの中で、誰かが「目標って何だっけ」と言うだけでも、話の向きが変わります。
反対されたときのための表
最後に、この記事の中身を1枚の表にしました。スマホのメモに写しておくと、現地で反対された日に使えます。
| そのときの気持ち | 頭の中ですること | スタッフに聞くなら |
|---|---|---|
| 「否定された」と感じる | 指摘が向いているのは自分か、案か、を分ける | 「どこが一番ひっかかりましたか」 |
| 言い返したくなる | 目標がずれていないかを先に確かめる | 「この案の目標は〇〇で合っていますか」 |
| どこを直せばいいかわからない | 目標までの距離を言葉にする | 「目標に対して、いま何が足りないですか」 |
| もう手がつけられない気がする | 次の1時間でやることを1つに絞る | 「次に直すなら、どこからですか」 |
| 直し終えた | 最初の案と比べて、何が良くなったかを書き残す | 「前の案と比べて、どう見えますか」 |
反対されるのは、気持ちのいいことではありません。げんげんさんの話でも、学生は最初は反発しています。そのうえで、げんげんさんはこう話していました。
最初は反発はするんだけれども、最後にはすごく満足そうな、満たされた表情になる。 げんげんさん