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やりたいことが決まらない大学生へ。何をするか未定のカンボジアに手を挙げた、げんげんさんの4年

4年前、英語トレーナーだったげんげんさんは、何をするかも決まっていないカンボジアの新しい事業に手を挙げました。いちばん苦しかったのは「始まる前」。キミタビの運営責任者になった今の話と、偶然をキャリアに変える研究から、今日できる小さな一歩を表にしました。

 文:キミタビ編集部

そろいの黒いポロシャツで並ぶ、キミタビのスタッフ

会社の中で、新しい話が出る。カンボジアで、新しい事業を立ち上げるらしい。

何をする仕事なのかは、まだ誰にも分からない。それでも「ぜひ行きたい」と手を挙げた人がいました。

4年前のげんげんさんです。当時の仕事は英語トレーナー。いまはキミタビの運営責任者です。

やりたいことが決まっていないと、動いてはいけない気がする。就活が近づくほど、その気持ちは強くなります。げんげんさんの場合、動くのが先で、やりたいことはあとから見えてきました。

手を挙げたとき、仕事の中身は決まっていなかった

げんげんさんは、もともと長く海外に住んでいました。コロナで日本に帰ってきて、また外に出たいと思っていたところに、カンボジアの話が来ました。

その当時、僕は英語トレーナーをしていたんですが、会社の中でカンボジアの新事業を立ち上げるという話が出て、僕はカンボジアに興味を持って、ぜひ行きたいと立候補したのが、一番最初のカンボジアのきっかけです。 げんげんさん

そのときの気持ちを、こう話しています。

また海外に戻りたいなと思っていたので、新しい冒険、ワクワクみたいなところがすごく強かったです。 げんげんさん

ここで目を引くのは、行く前に仕事の中身が決まっていなかったことです。

その当時は英語に関すること、何をするかっていうのは全然決まっていなくて、いろんな人にカンボジアの話を聞いたりとか、いろんな仕事の話を聞いたりとかしながら、どうやったらこのカンボジアの新規事業がうまくいくんだろうっていうのを、ゼロから(中略)手探りで全部やってきたみたいなところですかね。 げんげんさん

「何をやりたいか」が先にあったのではありません。先にあったのは、カンボジアへの興味と「ぜひ行きたい」という気持ちです。中身は、行ってから人に聞いて、少しずつ作っていきました。

アドバイスはくれる。でも、決めるのは自分

ライオンは子を谷に突き落とし、這い上がってきた子だけを育てる。そんな言い伝えがあります。げんげんさんは、当時の自分をそれにたとえました。

今は社長なんですけど、その社長に、本当に突き落とされるライオンの子供の気分だったんですけど。 げんげんさん

ただ、すぐにこう言い直しています。

落とされたというか、ベンチャーならではなんですけど、自分で答えを見つけていかなきゃいけないっていう。社長はアドバイスはくれるけれども、決断は自分でしていくっていう、その決断ですね。 げんげんさん

アドバイスはもらえる。でも、決めるのは自分。これが難しかったと言います。

今までの中で自分の人生の決断はしてきたんですけど、ビジネスにおいての決断はやったことがなかったので、しかも新しいやったことのない仕事がどんどん舞い込んできたので、どう決断したらいいかも分からない、どう考えたらいいかも分からないっていうところですかね。 げんげんさん

海外に住む、帰る、また出る。自分の人生のことは、自分で決めてきた人です。それでも、仕事の決断は別物でした。経験のない人が「どう考えたらいいかも分からない」のは、当たり前のことなのだと分かります。

いちばん苦しかったのは、始まる前

4年間でいちばん大変だったことを聞くと、げんげんさんは迷わず「始まる前」を挙げました。

一番大変だったのは、一番最初のキミタビを作っている途中、やる前ですね。あの時は、何をどの順番でやったらいいかも分からないし、すべての仕事が初めてで分からないことだらけすぎて、あの頃はやさぐれてたと思います。 げんげんさん

ところが、始まってからは様子が変わります。

でもキミタビが始まってからは、大変なことはたくさんあるんですけど、キミタビの仲間がどんどん増えていったり、参加者の子たちとの交流とか、自分のやりたいことみたいなところがすごく目に見えるようになって、始まってからは、そこまですごい大変だったなっていう思いはないですね。 げんげんさん

大変なことが減ったわけではない、と本人は言っています。変わったのは、やりたいことが「目に見えるようになった」ことです。

やりたいことは、考え続けていれば見つかる。そう思いがちです。げんげんさんの場合は、動き出して、人と会って、あとから見えてきました。いちばん重かったのは、見えないまま準備をしていた時期でした。

覚えているのは、言葉より「空気感」

苦しい時期に、何が支えになったのか。名言のような一言を期待して聞くと、答えは少し意外でした。

僕は場面場面でその人が言う言葉は、実はそこまで覚えていることができなくて、でも、なんだろうな、その空気感ですかね。僕がこの苦しい中でも諦めずにサポートしてくれるっていうところが、もうなんか、やるしかないなと思えたし。 げんげんさん

もう一つは、同じ立場の友達です。

周りの友達で、同じような悩みを抱えていたり、同じような境遇だったりする人が実はいたので、その人たちと切磋琢磨しながら乗り越えてきた記憶があります。 げんげんさん

決めるのは自分。でも、ひとりで決めているわけではない。見放さない人がいて、同じように迷っている仲間がいる。げんげんさんが手探りの時期を越えられたのは、この2つがそろっていたからだと、本人の話から読めます。

研究では:偶然は「好奇心」から始まる

げんげんさんの4年は、キャリアの研究でいう「ハプンスタンス学習理論」とよく重なります。クランボルツ(Krumboltz)らが唱えた考え方で、計画がなくても、偶然のチャンスからキャリアの選択肢が広がっていく、というものです。

この理論を日本のキャリア支援の場で使うために整理した吉川(2023)の論文から、学生にとって大事な点を3つ拾います。

1つ目。偶然を生かす力として、好奇心・持続性・柔軟性・楽観性・冒険心の5つが挙げられています。論文はこれを、心がけや性格ではなく、学んで身につく「スキル」と読んでいます。心がけだと考えると、できない人は「やる気が足りない」と見られてしまうからです。

2つ目。5つのうち、起点になるのは好奇心です。好きなこと、面白いと思うことなら、動き出すハードルが下がる。人と出会ったときにも、一歩踏み込んで質問しようという姿勢になる、と書かれています。

3つ目。最初から大きく動かなくていい。慎重な人でも、興味のある分野の本を図書館で探す、詳しい人がいないか知り合いに聞いてみる、くらいならできる可能性が高い。そこで何か情報が得られれば、「行動してみるのも悪いものではない」という小さな学びになり、少しずつ大きな行動へ進めるようになる、という流れです。

げんげんさんも、手探りの中でしていたのは「いろんな人にカンボジアの話を聞いたりとか、いろんな仕事の話を聞いたり」でした。研究の言う小さな行動と、同じ形をしています。

ただし、この理論は「動けば必ずうまくいく」とは言っていません。論文も、偶然が学びにつながるかどうかは、ある意味で確率の問題だとしています。私たちは、だからこそ小さく何度も動いてみることに意味があると見ています。

今日からできる:5つのスキルを小さく試す表

5つのスキルを、げんげんさんの話と、今日できる小さな行動に分けて並べました。全部やる必要はありません。1つ選んで、今週中に試してみてください。

スキル げんげんさんの場面 今日できる小さな行動
好奇心 カンボジアに興味を持ち、「ぜひ行きたい」と手を挙げた 最近「ちょっと気になった」ことを3つ書き出し、1つについて本を1冊探す
冒険心 何をするか決まっていない事業に立候補した 結果が分からない誘いに、1つだけ「行きます」と返事をする
柔軟性 (今回の取材では聞けていない) 「自分はこういう人」と思っていることを1つ書き、逆の行動を1回してみる
持続性 「やさぐれてた」時期を越えて、最初のキミタビを始めた 途中でやめたことを1つ選び、あと1回だけ続きをやる
楽観性 (今回の取材では聞けていない) 「やってみて、思ったより悪くなかったこと」を1つ、日記に書く

迷ったら、表のいちばん上から。好奇心が、ほかの4つの入口になります。

もう一つ、げんげんさんの話から足すなら、「一緒に迷える人を探す」ことです。同じような悩みを持つ友達がいたことが、もう一つの支えでした。気になることを、まず誰かに話してみる。それだけで、表の「好奇心」と「冒険心」を同時に使っています。

終わったあとに届く連絡

運営責任者になった今、げんげんさんが続けている理由は、参加した学生の変化だと言います。

僕もとことん人生に悩んで、今の仕事についているんですけど、今の学生は就活だったりとか、これから世界に出る直前で、人生でたくさん悩むことがあるっていうところで、悩みながらも自分なりの答えを出して、キミタビが終わった後も連絡をくれたりとか、会いましょうよって言ってくれたりとか。 げんげんさん

いちばん印象に残っているのは、最初の回に参加した学生から届いたLINEです。キミタビがきっかけで考え方が変わり、自分の行きたい道を選べた、と書いてありました。げんげんさんは、そのメッセージを「今でも大切にとっています」と話しています。

カンボジアという国に、良くないイメージを持つ人がいることも、げんげんさんは分かっています。そのうえで「僕も現地に住んでいて、結論、僕たちは十分な準備をしてきていると思っています」と話しました。準備の中身は、安全のページにまとめています。

げんげんさんが、反対されたときの学生の顔について話した記事もあります。意見を反対されて悔しいときは?

最後に、一番伝えたいことを聞きました。

とにかく一歩踏み出したいと思った人は、ぜひ飛び込んできてほしいです。 げんげんさん

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